システムトレードへのこんな質問
ほとんどの投資家が、株価だけを見て投資するのに対して、Pが投資をするときには、企業を見る。
一般投資家は、株価の動きを見て予測するというところにあまりにも大きな時間を割き、力を注ぐ。
自分がその一部を所有することになるはずの企業を理解するために費やす時間が、少な過ぎる。
基本に過ぎるかもしれないが、これこそPの特徴を知るうえのルーツと言えるだろう。
株式投資をするかたわら、数多くの業種にわたる企業群を所有し、経営する、という経験と実績を持つP。
彼が他のプロの投資家とは、ひと味違った存在であることは、ここでも感じ取れるだろう。
企業を所有し、経営することが、Pに確かな優位性を与えている。
企業経営で経験する浮き沈みを、株式市場での取引に応用できる。
一般のプロの投資家にはとても得難い経験をしているということだ。
彼らは資産評価モデル、ベータ値(リスク判定)、モダン・ポートフォリオ・セオリーなどの研究に忙しい。
一方でPは、自分の企業の損益計算書、設備投資のための資金需要、現金収入の能力などを検討する。
「君は、陸の上を歩く気分がどんなものか、魚に説明できるかい?」とP。
「陸上に一日だけ上がることは、それについて、海の中で一00日間も話し合うことにも当たる。
一日だけ企業を経営することにも、まったく同じ意味合いがある」というのがその答えだった。
彼は、投資家と企業家は、企業を同じ目で見るべきだと言う。
基本的には、彼らが望むものは同じだからだ。
つまり、企業家は企業全体を買おうと思い、投資家は企業の一部を買いたいと思うからだ企業家に、企業を買うときに何を考えるか、と聞くと、多くの答えは「どれだけの現金収入を上げる力があるか」ということだ。
長期間をとれば、企業の価値と収益力には直接的な因果関係がある。
理論的には、企業家と投資家は、利益を上げるためには、同じ変数を見るべきなのだ。
しかし、仮りにPの投資戦略が、企業の見方を違えるだけで予に入るとしたら、たぶん多くの投資家が、彼の投資戦略の推進者の列に加わることができるだろう。
しかし、不運なことに、そうはいかない。
企業の見方を変えるだけではなく、投資成果の評価と、その公表方法も変えなければならないからだ。
従来、投資の成果を計る基準は、価格の変動だった。
株の買値と、現時点の相場との価格差である。
長期間をとれば、株価は、企業の価値の動きに応じて定まるはずだ。
しかし短期では、株価は企業価値の動き以外の要素によって上下に変動する。
ほとんどの投資家が、この短期の動きによって、投資方法の成否を判断するところに問題が残る。
ところが、実はこの短期の株価の動きは、企業の経済価値の変化とはあまり関連性がなく、他の投資家の行動を読む、という要素の影響を表わしていることのほうが大きい。
それに加えて、プロの投資家は、四半期ごとに顧客に対して報告しなければならない。
多くの場合、顧客は、自分のポートフォリオの成績が、予定の運用成果を下回っていると不満を感じて、運用責任者の能力を疑うようになる。
短期の運用成果を改善しなければ、顧客を失いかねない。
なると、プロとしては株価を追っかけたくなる。
これらの数字が改善されていれば、長期的には、それが株価に反映されることを彼は知っている。
短期的な株価の動きは、たいした意味を持たないという。
このように、企業の経済価値の変動を物差しに使うときの問題は、これが慣習に反しているということである。
顧客、投資の専門家ともに、株価を追っかけるように習慣づけられている。
相場の動きは毎日報告される。
顧客への月例報告書には株価の変化が盛り込まれ、フロの投資家の運用成果は、これも株価の動きをべースにして、四半期ごとに評価される。
投資家がこの考え方でポートフォリオの運用成果を判断するようになれば、株価だけを追っかけるという非合理的なやり方は後退していくのではないだろうか。
もし、短期の株価変動に代わって、経済的変数を使う方法を採用することは、あまりに現実離れしていると考えるなら、近来、機関投資家の間に急速に受け入れられてきている連携投資法を検討することを勧めたい。
一九九0年代に入ると、新しい投資戦略が採用され始めたのが確認される。
かつて、短期の売買の中心になっていた機関投資家が、買い入れた株式の発行会社に対して、オーナーのような対応をするようになったのである。
この考え方は投資家と企業の聞に、長期にわたる関係が出来上がるという意味を込めた。
連携投資法と呼ばれるようになっている。
Sの後押しもあって、機関投資家は、従来よりは大きな比率の株式を買い入れて、長期的なオーナーのように振る舞うことができるようになってきた。
連携投資法の論理は明快である。
投資家は辛抱強い。
資本を提供する。
これを受けた企業の経営者は、長期の企業目標に向かって努力を傾注することができる。
両者とも、短期の株価変動は気にしない。
将来の成果を秘めた連携投資法は、機関投資家にとって魅力あるものになっている。
一九八0年代に、インデックス投資という消極的な投資法が高い成果を収めたのに対して、一九九0年代を取り巻く環境は厳しいものがあると予想される。
今日、年金基金が米国株の五五%を保有している。
従来は、投資家が企業や経営者に失望したら、その会社の株を売って、他の投資先を探した。
ところが、巨大年金基金が持株を売り払うとなると、資産のわずか一%を手離すとしても、一企業の株式としたら非常に大きな比率を占めることになりかねない。
一つの取引で何百万ドルという株式が売られれば、その影響は破壊的で、不利益をもたらすことになろう。
その代わりに機関投資家が学びつつあるのは、株式を長期間保有し、経営者に協力して、企業の業績向上に努めるということである。
そうすれば、単純に株を売り払うよりははるかに好収益を期待できる、ということだった。
ただ連携投資法は、まだ発育中のものである。
最も先端的な部分では、投資家と経営者の衝突といった面も含んでいる。
しかし、一九八0年代と違って、乗っ取り屋が経常障の追い出しを図り、会社を分裂させてしまうというようなときには。
連携投資家。
は経営側に協力して、企業の強化に向かうだろう。
一方、基本のところでは、この投資法は、ただ辛抱強い資本を供給し、企業の動向を見守るだけである。
そこで、経営陣は乗っ取りをかけられる懸念や、不満を持つ投資家のことを心配せずに、企業戦略の遂行に専念することができる。
Pの場合は、この型の連携投資法である。
彼の意図は、まず企業を買ったうえで、その内部を変えていくというのではない。
それとは逆で、彼は、大きな改革を必要とするような企業を避ける。
さらに、彼が買収するのは、株主のほうを向いた経営者がいる企業だから、株主の収益を増やすという点で株主と対立することは考えられない。
ほとんどの場合、彼は株主投票権については、その権利行使を経営側に委任している。
ときには役員の列に加わることもあるが、それがすべてではない。
Z、Wの二社の例でも、委任状を出して、役員にはなっていない。
Pは、連携投資法の考え方を、その名前がつけられる前から、そして大きくもてはやされるはるか以前から推進してきた。
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